研究課題
本研究では、伸縮自在の大面積シート集積回路を実現すため、伸縮性電子材料のデバイス物理・界面物性を解明し、さらに作製技術を確立する。特に、ナノ微細化された有機トランジスタと伸縮性の配線を集積化し、曲げても引っ張っても壊れない伸縮自在で丈夫な大面積シート集積回路を試作する。さらに、有機トランジスタとシリコンLSIを融合し、大面積シート集積回路の設計と製造技術を確立する。染谷らは、有機トランジスタを印刷した高分子フィルムを機械加工でメッシュ構造にすることで、伸縮性のある電子人工皮膚の作製に成功している。このメッシュ構造は、25%以上伸張させると金属の配線が破断して機能しなくなった。本研究では、メッシュ構造の配線に伸縮性のナノチューブを活用し、伸縮率200%の大面積シート集積回路を作製する。さらに、自由曲面に貼れて初めて可能となる大面積シート集積回路のユニークなアプリケーションを示していく。有機トランジスタは、シリコンにはない優れた特徴を兼ね備えながら、これまでアプリケーションが明確ではなく、いまだに産業化に至っていない。筆者らは、既存の競合素子が多いディスプレイ応用ではなく、電子人工皮膚のように既存素子では実現されていないところで有機トランジスタの突破口を切り開き、新しいアプリケーションのデモを行うことによって、社会に分かりやすい形で広く情報を発信していく考えである。本年度は、ナノチューブをゴムの中に均一分散させる技術をさらに進めることで、ナノチューブ・ゴムのコンポジットを作製し、これを印刷手法を用いて微細にパターニングする技術を確立した。より具体的には、導電率100S/cmで伸縮率30~40%、導電率10S/cmで伸縮率100%を示す新しい伸縮性導体の開発に成功した。特に、新しい分散方法により、ペーストの粘性を10Pas以上まで向上させることにができ、スクリーン印刷を用いて100ミクロンのパターニングを行うことができた。この伸縮導体配線の有用性を実証するため、有機トランジスタ、有機発光素子(LED)と集積化を行い、世界で初めてアクティブマトリックス駆動の伸縮性有機LEDディスプレイの作製に成功した。これまでのディスプレイとは異なり、球面や人も体などあらゆる曲面、可動面に張ることが可能となり、新しいディスプレイの可能性を切り開くことができた。一連の成果は、2009年5月のNature Materials誌に掲載されて、話題を呼んだ。この伸縮配線の更なる微細化を進めるため、アトリットル・インクジェットを応用する手法を検討し、さまざまなインクを微細にする技術開発を進めている。有機トランジスタの高性能化に関しては、自己組織化単分子膜をゲート絶縁膜に用いる技術開発をさらに進めており、2V駆動で移動度2cm2/Vsを実現するなど、高機能化、高速動作化において特筆すべき成果を上げることができた。
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