研究課題
本研究では、ナノ印刷技術を駆使して、世界初であるゴムのように伸縮自在な大面積シート集積回路を実現することをねらいとする研究を推進してきた。これまでの研究で伸縮性に優れる集積回路の実現に成功しているので、最終年度は、実用化への最大の懸案である有機トランジスタの高信頼性化に関する課題に取り組んだ。その結果、今年度は、フレキシブル基板上に250℃の加熱に耐えることができる低電圧駆動する有機トランジスタの作製に成功した。これまでの研究では、作製した有機トランジスタに封止膜を成膜することで、150℃の耐熱を実現してきた。しかしながら、封止膜を成膜する前のトランジスタの耐熱性は100℃以下と低く、トランジスタの作製プロセスを制限していた。今回作製した有機トランジスタは、自己組織化単分子膜とアルミ酸化膜、合わせて6nm程度の薄膜を絶縁膜に用いることで、2Vの低電圧での駆動を実現した。さらに有機半導体層に、大気安定で知られているDNTTの誘導体であるDPh-DNTTを用いることで、非常に高い耐熱性を実現することができた。作製した有機トランジスタは2V駆動で電界効果移動度2.0cm2/Vs,ON/OFF比は105以上を示した。作製した有機トランジスタは大気中、250℃で30分間加熱を行った後もきちんとトランジスタ動作をし、電界効果移動度は1.6cm2/Vsを示した。有機半導体層に用いたDPh-DNTTの熱安定性を調べたところ、300℃近くまで構造変化を起こさないことを確認することができ、非常に安定な材料であることがわかった。また}薄膜の結晶構造のX線解析を行った結果も、加熱前後でほとんど変化が起こっていないことを確認することができた。さらに、作製した有機トランジスタを用いて集積回路をフレキシブル基板上に作製した。作製した集積回路は、大気中で200℃、1時間の加熱を行った後もきちんと動作することを確認した。また、ソース・ドレイン電極をインクジェット印刷で成膜したところ、金電極を蒸着で成膜した有機トランジスタの特性と同等の特性を示した。印刷で作製した電極の焼成条件は120℃で3時間であるが、この焼成プロセスによるデバイス特性の変化はほとんどないことが確認された。
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Advanced Materials
巻: (in press)
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