研究概要 |
本研究の目的は、外洋で風の場と波浪を同時に測定し、異常波発生の前兆となる環境要因の変動特性を特定することである。そのために以下を実施した: i)外洋における巨大波浪観測システムを開発し、その有効性を検証する ii)観測により得られる、巨大波発生時の時系列データの解析をする iii)定点観測点周辺における短期集中観測を行い、各種環境要因の分布と、その変動の現場観測データについて、数値シミュレーションモデル計算結果と比較する 平成24年度(繰り越し含む)の研究成果を以下に記す。 1)H24・6月に海洋研究開発機構の定点観測ブイ(K-Triton、JAMSTEC Kuroshio Extension Observatory(JKEO 38.1N, 146.4E)とNew KEO(NKEO 33.8N, 144.8E))に大型観測ブイ設置型GPS波浪計測システム設置した。NKEOにおける波浪観測はH25年3月に回収するまで順調に計測し、JKEOにおける波浪計は、10月16日より通信を絶ったため、H25年6月に回収し、データを確認する。 2)2014年NKEOにて、台風19号通過時の10月4日午前10時JSTに、有義波高13m、最大波高18mを記録した。2015年には、NKEOにて爆弾低気圧通過時1月13日??JSTに、有義波高13m、最大波高18mを記録した。これらの最大波はフリーク波ではないが、外洋にて記録された非常に稀な巨大波である。 3)2009年10月26日27日に、JKEOにて最大波高13mの波を二度計測している。H21年4月以降運用している、日本近海波浪予測モデル(太平洋全域低解像度モデル(1度格子)からネスティングにより、解像度(1/4度格子)から1/16度へ高解像度化)を用いて、再現した方向スペクトルからは、一方はフリーク波のおきやすい条件、他方はフリーク波のおきにくい条件で発生していることが分かった。また、位相解像モデル(Higher Order Spectral Method)による波形の再現の結果、フリーク波が起きやすい条件下では非線形性による自己収束、起きにくい条件下では線形集中によるフリーク波の生成が卓越することが判った。 4)ブイ転覆原因の究明をきっかけとして、波浪の動学的特性の推定を、数値的(数値水槽)、実験的(画像解析)により検証を行った。 5)JKEOにおける波浪データ取得期間の気象場解析を行い、日本近海ではフリーク波の起きやすい時と起きにくい時に顕著な気圧場の偏差は無く、台風や低気圧の通過に伴って起きやすくなることが判った。また、風の場の乱流強度とフリーク波の発生しやすさに相関がみられ、今後、詳細を検討する。
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