細胞極性制御キナーゼPar1の新規基質として見つけたGAKINの機能、およびその制御のしくみを分子・細胞から個体レベルで調べることを目的としている。21年度の解析から、GAKINが細胞内を移動しながら集積する様子が観察されていたが、Par1リン酸化部位変異体ではいったん集積するとそこから動かないのに対し、野性型ではその後も動く様子が観察された。Par1によるGAKINのリン酸化が、動的なGAKIN移動を起こすために重要な役割を持っている可能性が示唆された。また、GAKINが「tubular endosome」と呼ばれるチューブ状の集積構造をとることや、tubular endosomeの形成に関わる低分子量型G蛋白質Rab8とGAKINが複合体を作ることも明らかとなった。この複合体形成はRab8の活性化状態に依存しておらず、GAKINはRab8のエフェクターとしてではなく、Rab8を含む蛋白質複合体を輸送することで機能しているのではないかと考えられる。GAKIN遺伝子ノックアウトマウス作製に関しては、21年度の成果によって得られていたキメラマウスを交配させて、遺伝子ヘテロ欠損マウスを得た。さらにヘテロマウス同士の交配によりホテ欠損マウスも得られた。遺伝子レベルのみでなく、GAKIN抗体を用いたウエスタンブロットによる解析で、蛋白質レベルでの欠損も確認できている。GAKINホモ欠損マウスは野生型と同様に成長しているが、尾を持ってつり下げた際の足の動きに異常が観察されており、神経系に何らかの異常が生じている可能性が示唆された。GAKIN遺伝子部分に挿入したLacZの発現を調べているが、現在のところ明瞭なシグナルは観察されていない。
|