研究概要 |
これまでの手法では、柱頭のサンプリングが困難であったことから、今年度は、レーザーマイクロダイゼクション(LDM)により、自家不和合性反応に機能している乳頭細胞を切り出し、次世代シーケンサー解析(NGS)と融合することにより、花粉と雌ずいの接点ともいえる局所的な遺伝子情報基盤を構築できると考えた。自家不和合性程度の異なるBrassica rapa4系統を材料に、網羅的にトランスクリプトーム解析を行ったところ、約11,800種類の遺伝子が共通に発現していた。この乳頭細胞発現遺伝子情報は、自家不和合性反応、受粉反応の分子機構を解明する上でも有用な遺伝子情報となった。現在、自家不和合性に関連すると考えられるいくつかの遺伝子について、モデル的に遺伝子破壊系統を作出することで、その機能解明を目指している。 425系統の自然集団から見出した自家和合性系統(#1,#2)について、遺伝学的解析からS遺伝子以外の変異によるものではないことを明らかにし、QTL解析を行った。SSRマーカーにより構築された遺伝子地図上にマッピングしたところ、#1の和合性因子は第3染色体上に、#2は第1染色体上に位置しており、これらは新規のS遺伝7-下流因子をコードしていることを示した。また、昨年公開されたBrassica rapaのゲノム情報を活用し、原因遺伝子単離に向けた基盤が構築できた。 これらにあわせて、この5年間の成果を最終報告書にまとめ、関連研究者などに配布した。また、国民への科学の普及のために、アウトリーチ活動を100件以上行い、講義の後に児童・生徒から返却された手紙、レポート、6,000通以上全てに、返事を書いて、小中高の教員から高い評価を得た。
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