Igf2/H19遺伝子座におけるゲノム刷り込み現象は、由来する親の性依存的なH19-ICR配列のDNAメチル化(刷り込みメチル化)により制御される。本研究では、H19-ICRの刷り込みメチル化がいかにして確立・維持されるのかを解明することを目的としている。平成21年度に申請者らは、 (1)H19-ICR DNA断片のみを用いて複数系統のTgMを作製し、同マウス・ゲノムのメチル化解析を行った。その結果、用いたICR DNA内にメチル化を指令する十分な情報が存在することが明らかになった。 (2)次に、親の性異存的なDNAメチル化シグナルの本体がH19-ICR(2.9kbp)内のどこに存在するのかを明らかにするための第一歩として、野性型ICRを断片化し、遺伝子導入マウスの作製をおこなっている。今後、生殖細胞・体細胞にてメチル化解析を行う予定である。 (3)H19-ICR領域からCTCF結合配列を除去し、YAC TgMの作製をおになった。同マウスの解析の結果、着床前胚では変異型ICRにおける刷り込みメチル化か認められたが、着床後胚及び成熟個体の体細胞では、由来する親の性に関わらず高度にメチル化されていた。この結果から、CTCF結合配列は、母親由来ICRの非メチル化状態の「維持」に必要であるが、受精後刷り込みメチル化の「確立」には必須ではないことが示された。 (4)H19-ICRと同程度のCpG配列を有するλ DNA配列にCTCF配列を4カ所導入し、YAC TgMの作製をおこなった。今後、生殖細胞・体細胞にてメチル化解析を行うにとにより、CTCF配列のみではメチル化刷り込みを再現できないにとを確認する予定である。
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