研究課題
Igf2/H19遺伝子座におけるゲノム刷り込み現象は、由来する親の性依存的なH19-ICR配列のDNAメチル化(刷り込みメチル化)により制御される。本研究では、H19-ICRの刷り込みメチル化がいかにして確立・維持されるのかを解明することを目的としている。平成22年度に申請者らは、以下の研究を中心に実施した。(1)近年、ノンコーディングRNAがクロマチンの修飾状態に影響を与えることが、他の複数の刷り込み遺伝子座において明らかにされてきた。また、H19-ICRに相当する配列を持つRNAがマウスの卵に存在することも報告された。そこでIgf2/H19遺伝子座においてもICRを含む領域が転写され、親の由来を示す標識として機能し、これがアリル特異的なDNAのメチル化に寄与しているとする可能性を考えた。この仮説を検証するために、H19-ICR内の配列を一部欠損したYAC導入マウス(TgM)の作製を行った。(2)H19-ICRと同程度のCpG配列を有するλ DNA断片にCTCF結合配列を4カ所導入し、YAC TgMの作製を行った。同マウスの解析の結果、体細胞DNAは由来する親の性に関わらず高度にメチル化されていた。このことから、CTCF配列は受精後刷り込みメチル化の「確立」には不十分であることが示された。そこで次に、H19-ICR配列の内部にλ DNA断片を挿入し、YAC TgMの作製を行った。このマウスの解析により、H19-ICRの内部にあることが予想される親の由来を示す標識が、周囲の配列(ここではλ DNA)に働きかけ、これを刷り込みメチル化し得るのかについての検証を行っている。(3)親の性異存的なDNAメチル化シグナルの本体がH19-ICR (2.9kbp)内のどこに存在するのかを明らかにするために、野性型ICRを断片化し、YAC TgMの作製をおこなっている。今後、生殖細胞・体細胞にてメチル化解析を行う予定である。
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