研究課題
由来する親の起源を示す「印」がゲノムに記憶され、子においてその「印」に従って遺伝子が発現する現象を「ゲノム刷り込み」と呼ぶ。「lgf2/H19遺伝子座」において、前者は父親から、後者は母親から受け継いだ時にのみ発現する。この発現パターンは、遺伝子座内の「Differentially Methylated Region;DMR」により規定され、同領域は由来する親の性依存的にCpG配列のメチル化状態が異なる。DMRには精子においてメチル化されるものと、卵においてメチル化されるものとがある。このため、どちらの生殖細胞でメチル化されるべきかを指令するゲノム情報が存在することが示唆される。本研究では、この由来する親の性依存的に、非対称なDMRのメチル化を指令するゲノム配列の同定を通して、ゲノム刷り込みメカニズムの解明を目指している。この目的達成のため、申請者は平成23年度に、(1)2分割した野性型H19-ICR(2.9kbp)の間に、H19-ICRと同程度のCpG配列を有するλDNA配列にCTCF配列を4カ所導入した断片(λ+CTCF)を挿入し、YACTgMの作製をおこなった。次に、同マウスの導入遺伝子から、invivocre-loxP反応を用いて、H19-ICR配列を部分的に欠失させた後に、生殖細胞・体細胞におけるメチル化解析を行い、受精後メチル化刷り込み責任領域の絞り込みを行った。(2)H19-ICR領域にマップされる低分子RNAの存在がマウスの卵子において報告された。受精後刷り込みメチル化における同配列の役割を明らかにするために、相当配列をH19-ICRDNAから欠失させた後、YACTgMの作製と解析を行った。(3)DNAメチル化酵素の遺伝子破壊マウスを入手し、我々が作製した人工染色体導入マウスと交配することにより、受精後メチル化刷り込みに関わる酵素の同定を試みている。
2: おおむね順調に進展している
H23年度の交付申請書に記した2つの計画のうち、受精後メチル化刷り込みの責任領域の絞り込みはほぼ終了し、論文投稿準備を進めている。関与する酵素の同定についても順調に進行しており、すでに2つの酵素の関与が明らかになりつつある。
受精後刷り込みメチル化に必須のcisDNA領域が絞り込めてきたため、今後はその十分性を証明するための(再構築系)実験や、相互作用するtrans因子(酵素や転写因子)を同定するための実験をデザインする必要がある。
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Proc Natl Acad Sci USA
巻: 108 ページ: 18808-18813
10.1073/pnas.1104964108
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