研究概要 |
本年度、微生物感染によって活性化される自然免疫シグナル経路の新しい制御因子として、ポリADPリボースポリメラーゼ(PARP)スーパーファミリーメンバーであるPARP-13のアイソフォームを同定し、ZAPS(zinc finger antiviral protein, short form)と名付けた。核酸を介する自然免疫シグナルの活性化におけるZAPSの関与及びウイルス感染における役割をヒト細胞において検討した結果、細胞質においてウイルス由来のRNA認識に関わる代表的なパターン認識受容体であるRIG-Iのシグナル経路にZAPSが関与することを明らかにした。ZAPSをHEK293Tなどのヒト細胞に発現させた場合、RIG-Iリガンドである5'三リン酸RNA刺激によるI型インターフェロン(IFN)や炎症性サイトカインの発現誘導を強力に増強した。このようなZAPSのRIG-I経路に対する作用は、siRNAを用いてZAPSの発現を抑制させた健常人の末梢血由来単球において確認できた。また,zinc-finger nucleaseによるアプローチによって独自に作製したZAPS遺伝子欠損ヒト細胞を用いて解析した結果、RIG-Iによって認識されることが知られているニューキャッスル病ウイルスの感染によるIFN-β mRNAの発現誘導が顕著に阻害された。さらにZAPSの作用機序について検討を進めた結果、ZAPSは刺激依存的に細胞質においてRIG-Iと直接的な会合を行うことによってRIG-Iの活性化を促進し、下流の遺伝子発現を強力に増強することが示された。またZAPSの発現レベルを増加させることで、インフルエンザウイルス感染によるI型IFN応答を増強し、ウイルスの増殖を抑制することが細胞レベルで確認された。したがって、ZAPSは、ウイルスに対する感染防御として有用な標的分子であることが示唆された。
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