研究概要 |
本研究課題では、予後不良な急性骨髄性白血病において、発症および再発の原因となる幹細胞を同定し、白血病幹細胞の治療抵抗性のメカニズムをあきらかにすることを目的として研究を実施してい。20年度は、これまでにヒト白血病研究で主として用いられたin vitroでの増殖活性・薬剤感受性の評価でなく、in vivoにおいて、幹細胞から非幹細胞の分化、細胞周期、化学療法に対する感受性などの細胞動態を解析してきた。急性骨髄性白血病の患者骨髄よりCD34、CD38、種々の分化マーカーの発現に基づいてLin-CD34-,Lin-CD34+CD38+,Lin-CD34+CD38-細胞を純化した後、新生仔免疫不全マウスに移植することで、われわれはLin-CD34+CD38-細胞から選択的に白血病が発症することを確認した。Lin-CD34+CD38-細胞を移植したレシピエントマウスの解析において、末梢血中の白血病細胞が経時的に増加し、その増加曲線は、移植した白血病幹細胞の数と相関を示した。細胞周期の解析を実施したところ、Lin-CD34-,Lin-CD34+CD38+など白血病発症能をもたない非幹細胞分画と比較して、Lin-CD34+CD38-細胞ではGO期に存在する割合が有意に多いことが判明した。さらに、複数の症例から由来する白血病幹細胞の局在を、レシピエントマウスの骨切片を作製して評価した。CD34+細胞は、骨内膜、血管周囲、骨髄中心部の各所に認められたが、幹細胞分画については、骨内膜に多く存在することをconfocal imagingによって同定した。白血病幹細胞の、骨内膜における細胞周期についても、組織学的にin situで解析した。治療抵抗性については、CD34/CD38という表面抗原分子の発現との相関、さらに、細胞周期において発現が変化する分子との相関について、フローサイトメトリーおよびconfocal imagingを用いた検討を加えることで、白血病発症を規定する幹細胞の治療抵抗性が、細胞周期の静止期にとどまることに起因することが分かった。これらの知見に基づいて、さらに、抗がん剤抵抗性を示す幹細胞の細胞生物学的解析とニッチとの関連について解析を進める予定である。また、含めた白血病幹細胞の細胞周期の修飾が、抗がん剤抵抗性/感受性に与える影響についても研究を進めている。
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