自己免疫疾患は根本的治療法のない難病であり、自己免疫疾患の病因およびその治療法を開発することは社会的に急務の課題である。その課題克服のために、免疫系の活性化を調節する分子群ネットワーク機構を解明しその破綻機序を解明することは必須の方策である。また、自己免疫疾患の発症には遺伝的素因が深く関与しており、遺伝学的視点からの研究は原因解明に大きく貢献できると考えられる。 今年度の研究から、Notch2シグナルがCREB1と協調してCD8Tリンパ球のエフェクター機能を制御している分子機構を解明した。また、NotchシグナルはNK細胞のエフェクター機能も制御していることを明らかにした。それに加えて、Notchリガンドの一つであるJagged1はT リンパ球以外の細胞に作用し、間接的にCD8陽性Tリンパ球の活性化を抑制することを明らかにした。これらの結果から、Notchシグナルはリガンドの差異によりTリンパ球を正と負に制御することが明らかになった。 全身性エリテマトーデス、原発性免疫不全症、自己炎症症候群の家族例について全ゲノム解析を実施し候補遺伝子の狭小化を行った。いずれも、常染色体劣性遺伝形式によって発症したと考えられる家系について解析を行った。今後は、マイクロサテライトマーカーを用いてさらに領域の絞り込みを行い、原因遺伝子の同定を目指している。 今年度の研究によりNotchシグナルがTリンパ球応答を多彩に制御している機構が明らかになり、Notchシグナルが免疫療法の標的になりうることが示唆された。免疫関連疾患の原因遺伝子の解明研究については、候補領域の狭小化についてさらなる検討が必要である。
|