自己免疫疾患は根本的治療法のない難病であり、自己免疫疾患の病因およびその治療法を開発することは社会的に急務の課題である。その課題克服のために、我々は免疫系の活性化を調節する分子群ネットワーク機構および遺伝的素因を解明することを目指した。本年度に得られた結果は以下に要約される。①RbpjがCD11cでのみ欠損するマウスではCX3CR1を高発現する細胞集団が選択的に減少し、CD11cの発現が低いCX3CR1陽性細胞が増加することを見いだした。さらに、Notch1およびNotch2がともに欠損しているマウスでも同様の表現型が観察されたことから、Notch1とNotch2がCX3CR1を高発現する細胞集団の分化に寄与している事が明らかになった。②Notch1およびNotch2シグナルがメモリーCD4陽性Tリンパ球の維持に必須の役割を持つことを見いだし、それはグルコースの取り込みに依存していることを明らかにした。同様に、Rbpjが欠損するCD8陽性Tリンパ球でも、メモリー細胞の維持が障害されており、NotchシグナルはCD4とCD8陽性Tリンパ球の維持を制御していると考えられた。③RbpjがCD4陽性細胞で欠損するマウスでは、腸管のCD8細胞を発現するIEL細胞数が減少しており、それはstat5シグナルの活性化の低下と関係していると考えられた。Arntを欠損するマウスでもCD8を発現するIELが減少しており、それはstat3の発現低下に起因することを解明した。④家族性SLEのゲノム解析を実施し、候補遺伝子を同定する事に成功し、その候補遺伝子の遺伝子改変マウスを樹立中である。⑤CD98を欠損するマウスではCD4陽性Tリンパ球の活性化が顕著に低下しており、CD98は過剰なTリンパ球の活性化に寄与する分子であることが推測された。
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