研究概要 |
従来の機械学習の研究では,データが生成される環境が定常的である(すなわち,時間とともに環境が変化しない)という大前提のもとで理論が構築されてきた.そして,そのような理論に基づき,様々な学習アルゴリズムが開発されてきた.しかしながら,近年の応用分野では定常性が成り立たない場合が多いことが報告されている.本研究プロジェクトの目的は,環境の変化に対応するための基礎理論,および,実用的なアルゴリズム開発を行なうことである.そして,その成果を様々な分野に応用する. 本年度は,昨年度までに開発した共変量シフト適応の基礎アルゴリズムを様々な応用分野に適用し,その有用性を実証した.具体的には,音声による話者認識,脳波によるコンピュータ操作(ブレイン・コンピュータインターフェース),強化学習理論に基づくロボット制御,顔画像からの年齢認識に応用した.また,正則化最小二乗法を共変量シフト適応が可能なように拡張した回帰学習アルゴリズム,及び,カーネルロジスティック回帰法を共変量シフト適応が可能なように拡張した分類アルゴリズムを,MATLABと呼ばれる数値計算環境のもとで実装し,汎用的なソフトウェアをインターネット上で公開した. また,本研究プロジェクトにおいて得られた成果を含む約300ページの英文単行本を執筆しており,23年度にMIT Press社より出版される見込みである.
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