研究概要 |
本研究では,「表出知」を知能の内面を表出することと定義し,コミュニケーションにおける表出知に関して,以下の研究・開発を行った. 1.アージ理論を応用した自己充足モデルの拡張 多項ロジットモデルを用いた行動学習による自己充足モデルを提案し,ユーザ入力に対して柔軟かつ適切な行動出力を行うことを可能にした.また,Russellの感情円環モデルを用いて,ユーザ側の感情表現を積極的に考慮する機能を提案した. 2.自己充足ロボットBabyloidの評価 Babyloidを用いて,高齢者福祉施設にて2週間の短期実験を行った結果,以下の効果が示唆された. (1)実施期間前後において有意傾向(p=0.0796)が認められたことから,Babyloidとの関わり合いによって,抑うつ度を軽減できる可能性が示唆された. (2)介入期間を前半(1~7日目)と後半(8~14日目)の2つの期間に分けて,フェイススケール値の変容について評価したところ,フェイススケール値が減少する傾向にあった(有意差は認められなかった). (3)介入期間の前半・後半においてロボットの使用時間に大きな変化は見られず,ロボットを飽きなかったといえる.また,対象者5人のうちの4人が,1日1時間以上ロボットと接していた.特に今回の実験では,ロボットの使用を強制したわけではないため,対象者が自分の意志で「積極的にロボットと関わろうとした」行動が生起されることが示唆されたと考える.これは,結果的に高齢者の社会性や精神性の改善につながるものと思われる. 3.ロボット表情の動作タイミングについての調査 感性ロボットifootの自然な表情変化における目と口の動作開始タイミングを調査した結果,人間とifootの動作開始タイミングには同様の傾向があることが分かった.得られた結果をもとに表情を生成すれば,ロボットの表情表現はより自然なものとなり,ロボットに対する人の感情移入を促進できると考える.
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