我々人間を含む動物は、多くの刺激情報から、自らの行動選択に有効な状態変化を検出し、適切な状態認識の下で意思決定を行うことができる。これらの注意と階層的意思決定の神経機構を明らかにするために、色と形の2つの属性からなる2種類の図形から1つを選択させる意思決定課題を動物(ニホンザル)に行わせ、大脳基底核線条体からの神経活動を記録した。記録された神経細胞活動とサルの学習と意思決定との関係を解析した。この課題では、サルは2つの提示された図形の色または形に応じた量のジュース報酬に基づいて、より大きな報酬を得る図形を選択する。行動による図形選択と報酬の関係を学習しなければならない。昨年度までの行動学的な研究によってサルの学習戦略は、色と形の組み合わせからなる図形そのものと報酬の関係性を学習するばかりでなく、色や形の属性と報酬との関係を学習する事がわかっていた。本年度は、大脳基底核の線条体から神経活動記録を行った。図形属性と報酬の連合学習、および意思決定による比較と選択が大脳基底核の神経細胞上での情報表現を検討した。その結果、2つの図形を比較・選択を行うことができる手がかり刺激提示期間において、提示された2図形の色の組み合わせ、または、形の組み合わせのどちらか一方にのみ反応を変化させるような細胞活動が見つかった。それらの色・形のみに反応を変化させる神経細胞の割合は、それぞれの個体の学習戦略の汎化属性をよく説明するものであった。このことから、大脳基底核の線条体が、運動や単なる視覚図形と報酬の関係のみならず、より抽象的な色や形などの属性情報と報酬の関係性を学習し、より抽象的な行動選択を行う事に関与する事が示唆された。
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