運動・行動に異常のあるゼブラフィッシュ変異体を解析し、運動異常のメカニズムの解明を進めた。泳動が顕著に遅い変異体mi36の解析を進め、神経筋接合部におけるアセチルコリン受容体凝集に異常があることを見いだした。運動ニューロン末端から放出されるアグリンがアセチルコリン受容体凝集を促進することが哺乳動物を用いた解析から知られているが、mi36ではアグリンの下流に存在するアグリンの受容体かその共受容体、あるいはその他の必須構成分子に異常があることが強く示唆された。mi36の責任領域はゲノム情報の不完全な部分にあり、責任遺伝子の同定には至っていないが、今後の研究で明らかにしたい。また、全く動かない変異体mi90を解析し、カルシウムチャネルβサブユニットをコードするcacnb1遺伝子にナンセンス変異を見いだした。cacnb1の発現は神経系にも筋にも広く見られたが、筋電位記録から分かる神経系から筋への出力は正常であり、神経系は正常であり、筋に異常があることが分かった。さらに詳細な解析から筋で、しかも速筋と遅筋の両方でexcitation-contraction couplingが起きないため、泳動時にCa放出が起きず、その結果、全く筋収縮ができないことが分かった。cacnblの変異はヒトで周期性四肢麻痺を引き起こすことが知られるが、この運動障害はmi90変異体で見られる運動異常に一部類似しており、疾患のモデル動物になりうるといえる。
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