運動・行動に異常のあるゼブラフィッシュ変異体を単離・解析し、責任遺伝子の同定し、運動異常のメカニズムの解明を進めた。変異体310番は触刺激に応答した逃避運動ができないゼブラフィッシュ変異体である。変異をマッピング、クローンングすることで、GPIアンカータンパクの合成酵素であるGPIトランスアミダーゼの5つあるサブユニットの1つであるPIG-Uに変異を同定した。変異体は、PIG-Uを欠き、GPIトランスアミダーゼ活性を欠くことにより、GPIアンカータンパクを正常に合成できないことが分かった。それにより、変異体では、胚期の1次感覚ニューロンであるRohon-Beardニューロンにおいて、電位依存性ナトリウムチャネルの膜表出に異常があり、電位依存性のナトリウム電流が顕著に低下するため、Rohon-Beardニューロンで活動電位を発生できないことが分かった。その結果、ゼブラフィッシュは一次感覚ニューロンが機能しないため、触刺激を受容することができず、本来は触刺激でトリガーできるはずの逃避運動を遂行できないことが理解された。該当遺伝子は北欧の家系で報告されたまれなヒトの運動障害として知られるSCAR6のゲノム責任部位の内部にあり、PIG-UがSCAR6の新しい候補遺伝子ではないかと予想された。これを明らかにしすべく、北欧のグループと共同研究をはじめ、PIG-Uがヒトの新規の疾患遺伝子であるかを現在調べている。
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