本研究課題は細胞マニュピレーション技術を用いて細胞集団を作製し、正常に機能する人工生体組織の構築を目指している。組織レベルの細胞集団を設計するにあたって、2~8個の細胞集団を形成することに起因する細胞内での脂肪滴形成能の変化を調べた。細胞が正常に脂肪を蓄積することは、健全な組織の維持に不可欠な要素である。実験にはMEF細胞およびHepG2細胞を用いた。マニピュレーターによってこれらの細胞をそれぞれパターン基材上に2~8個の細胞集団を形成するように播種した。細胞どうしの接合は、細胞集団のカドヘリンを共焦点レーザー走査型顕微鏡により観察して確認した。これらの細胞集団を24h培養後、脂肪滴をNileRedで染色し蛍光顕微鏡観察を行った。その結果、同数の細胞からなる細胞集団どうしを比較した場合、接合している細胞の数が多い細胞ほど脂肪滴のサイズと数が増すことが分かった。また、パルミチン酸を添加して培養すると、この傾向がより強まることが分かった。更に、接合部の面積が同じ場合、脂肪滴蓄積の程度は接合する細胞の数が多いものの方がより強いことが分かった。本研究課題を遂行する上で、細胞集団を形成することにより脂肪滴蓄積に明確な差違を確認できた意義は大きい。特に、接合している細胞の数により脂肪滴の蓄積に差違が見られたことは大変興味深い。このことは、細胞集団の接合構造を調節してやることで脂肪の蓄積を制御できる可能性を示唆している。
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