研究概要 |
今年度は, 埋込治療素子について, 乳房内で最大限の効果が発揮できる様に素子加温範囲の検討を行った. 乳房内腫瘍が単独, あるいは複数に散在している場合を想定し, 素子埋込本数と加温範囲の関係について検証した. 素子サイズや, 励磁電力との関係に注目し, 乳房内での三次元分布を考慮して検討を進めた. 特に乳房表面(皮下直下)に腫瘍が多発する事を考慮し, 素子の全体サイズに関しても検討を行い, 腫瘍部位, 位置, 大きさから一意的に刺入する素子タイプの候補を複数挙げる事ができた. 続いて, この埋込素子を効率よく確実に動作させるための体外励磁装置開発を行った. 上記の埋込発熱素子は, 磁場方向に沿うように配置すると最も効率よく発熱する. 一つのソレノイドコイルや平板コイルで励磁する場合, 磁場方向が一定なので的確に患部を加温できない恐れがある. そこで素子の配置によらず励磁可能なコイルが必要である. 今回二種のコイルを用いて, 励磁電流の位相と周波数を互いに相違させた場合, 多方向の磁場が得られ, 臨床を想定した場合に有効であることを電磁界シミュレーションで確認する事ができた. 但し, 患部に配置できる形状を考えた場合, 同周波数での駆動とすると近接コイル同士の電磁結合のため, 誘起電流による電源破損が生じる. よって本検討では異なる二つの励磁周波数を用いてコイル駆動を行った. 具体的には, 同仕様の二つのソレノイドコイルを向かい合わせたカスプ型形状とした. なお所望である多方向励磁可能範囲は, コイル中間部位, 且つコイル沿端となった. 発熱素子をコイル中間部地点に配置し, 設置角度を変えて表面温度を測定した結果, 素子の設置角度を様々に変えても十分加温可能な事を確認できた. また3次元的に加温できるため, 本研究の初年度目標である配置に冗長性を持たせた体外励磁コイルの検討ができたと考えられる.
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