研究概要 |
今年度は,高年期の運動習慣に関連する過去の運動時期を明確にし,運動継続状況の違いによる生活・身体的特徴を検討した.対象は,国立長寿医療センター疫学研究部が行う「老化に関する長期縦断疫学研究(NILS-LSA)」の算四次調査に参加した60歳以上の男性523名,女性461名であった.運動習慣および喫煙歴,婚姻歴,既往歴等の生活・身体状況は質問紙と面接により確認した.体格.体力は竹井機器工業社製機器を用いて測定した.主な結果は以下に示す. 1) 10歳代,20歳代,30歳代,40・50歳代の運動経験と60歳以降の運動習慣との関連 60歳以降の運動習慣を目的変数,過去の各年代における運動習慣の有無を従属変数としたロジスティック解析の結果,40・50歳代の運動習慣のOdds比(95%Cl)は男性5.0(3.1-8.3),女性6.7(4.2-10.7)で有意であり(p<0.05),40・50歳代に運動経験を有することが60歳代以降の運動習慣の保有に最も関連することが示された. 2) 運動習慣の継続状況 10歳代から現在までの運動継続状況を「全くなし」,「不定期実施」「長期継続」,に分類した.各群の割合は,男性で21.8%,54.1%,24.1%,女性で31.2%,59.4%,9.3%であった. 3) 運動習慣の継続と生活・身体状況 2)に示した運動継続群間で差が認められたのは,男性の年齢,体重,BMl,自覚的健康度,喫煙歴,心疾患・関節炎既往,女性の年齢,身長,体重,がん既往,男女ともに握力,閉眼片足立ち,全身反応時間,脚伸展パワー,膝伸展筋力,上体起こしであった.体力は,関連要因調整後も男女ともに運動継続と握力,上体起こしとの関運は有意であった(p<0.05). 本研究により,40・50歳代の運動経験が高年期の運動習慣に関わること,運動習慣の継続により現在の生活・身体状況の異なることが明らかとなった.
|