研究概要 |
デジタルペンという新たな「教具」によって実現される筆記活用型授業の有用性と可能性を追求しつつ,またその活動がもたらす学習者の学びに与える影響・効果を測るため実証実験を行っている.平成21年度は,前年度に引き続き,埼玉県の高校と青森県の小学校で実証実験を行った.また前年度に行ったグループインタビューの結果を分析し,システムの持つインタラクティブシステムとしての効用を明らかにした.具体的には,インタビュー時の音声データを全て書き起こし,Modified Grounded Theory Approachのプロセスに沿ってシステム利用に関する意識・行動・印象をボトムアップに概念化していった.その結果,教室内のインタラクション範囲の拡大,生の回答の開示,自分の状況の相対化という3つの要因が,失敗に対する差恥心,他人の状況への好奇心,競争心という3つの心的変化に影響し,振り返りや開示へのためらい,意欲・覚醒度の向上に寄与したことがわかった.本システム利用に伴い,演習過程の透明性が増加し,インタラクション範囲が拡大し,生徒は自分の置かれた状況を相対化しやすくなった.これらはポジティブに競争心の増大を引き起こした.その一方で,失敗に対する差恥心も呼び起こされることになった.これと他人の様子を伺いたいという思いは,振り返りや開示に対するためらい,意欲の増大へとつながった.これらのシステム導入時の授業活動を「舞台化」のアナロジーで捉えることにより,システムがもたらすインタラクションの特性を的確に表現することができた.
|