研究概要 |
デジタルペンという新たな「教具」によって実現される筆記活用型授業の有用性と可能性を追求しつつ,またその活動がもたらす学習者の学びに与える影響・効果を測るための実証実験を行ってきた.平成22年度は,昨年までの実践活動を継続しつつ,以前利用していた操作負荷が高く誤差の多い超音波方式のデジタルペン方式と,紙のドットパターンを読み取り簡便で精度の高いアノト方式の比較分析を行った.具体的には,内容理解と積極性,および筆記公開やシステムによる筆記チェックに対する緊張度合いの相関を調べた.その結果,アノト方式による簡便性の高さが,理解度の低い生徒の積極的参加を阻害せず,また筆記精度の高さが,システムが筆記をチェックすることに対する,理解度の高い生徒の緊張感を緩和することを確認した.このことは,従来Oviattらが報告した「低い成績の学習者にとって高度な情報機器の操作負荷が問題解決時の思考を妨げる」という知見を発展させ,システムの完成度や精度がとくに理解度の高い学習者の不要な心配を軽減するために重要であることがわかった.今後,学習者がシステムに対して感じる「熟達度/難易度」や「信頼感」「学習に対する意義」といった要因を考慮することが,デジタルペンに限らず,一般的な学習支援技術の研究に必要であると思われる.また日常的な筆記利用授業を推進するために,教師の負担を軽減し,万一のトラブル時の対応も考慮した「筆席マップ方式」を考案し,システムに導入したうえで小学校における実践を通じて,その有効性を確認した.
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