研究概要 |
先端出口径が10μmのテーパーガラスキャピラリーを用いて2MeV陽子ビームの集束を行い,得られたマイクロビームを用いて2次元元素マッピングの原理実証実験を行った.分析試料としては1000mesh/inchの銅製のファインメッシュを用いた.高精度自動XYステージにより試料をビーム軸に対して垂直方向に動かすことにより,マイクロビームによる試料のスキャンを行った.発生したX線エネルギーをマルチチャンネルアナライザーにより分析し,特定の元素の2次元空間分布をPC上で再構築したものを実際の形状と比較した.その結果,ビーム径から予測される空間分解能(10μm)が実際に得られていることを確認し,ビーム径を絞ることで空間分解能をさらに上げることが十分に可能であることを示した.その一方で,キャピラリーから得られるマイクロビーム電流が現状では小さく,測定の高精度化と時間短縮のためにはビーム輸送効率のさらなる向上が必要であることが分かった.そこで,モンテカルロ計算コードの改良を行い,任意の壁面形状を持つガラスキャピラリー中での入射イオンの軌道について詳細に調べた.その結果,散乱イオンのキャピラリー壁からの脱出確率が、全体のビーム輸送効率に大きく影響することが分かった.キャピラリーの内壁形状を従来の凸形状から凹形状に変えることで,ビーム輸送効率を2倍以上改善できることを示した.本研究を通じて,キャピラリー集束マイクロイオンビームを用いた生体細胞元素マッピングに必要な基礎データを取得することできた.
|