研究課題
開口フラーレンは、小分子内包フラーレンやヘテロフラーレンの前駆体として極めて魅力的であり、近年、ナノテクノロジーの急速な発展と共に注目を集めている。一方、チオフェンのオリゴマーやポリマーは、トランジスタなどの電気化学的デバイスへの応用が可能であり、そのπ共役系を拡張すれば、さらなる物性制御も可能となる。本研究では、チオフェンをフラーレンC60に導入し、C60部位のπ共役がチオフェン部位まで拡張された化合物の合成と電気化学的な挙動を検討した。C60とチエニル基をもつピリダジン誘導体の1-クロロナフタレン中の熱反応と、それに続く8員環開口部の酸化的開裂反応により、12員環開口体を収率27%で単離した。次にTHF中で(i-PrO)3Pを加え室温で2時間攪拌してエポキシドを発生させ、続いてCuCl存在下AcONaを加え室温で30時間攪拌し、加水分解することでジオールが収率33%で得られた。さらに、(AcO)2IPh/I2の存在下、可視光を照射することにより、中間体である12員環開口体の構造異性体を収率22%で合成した。その構造は1H & 13C NMR, MS, IRスペクトルにより決定された。そのUV-Vis-NIRスペクトルでは、最長吸収波長の吸収端は900nm付近におよび、π共役系の拡張に伴うHOMO-LUMO gapの減少が示唆された。また、酸化還元電位をベンゾニトリル中のCVにより測定したところ、可逆な第一還元波と非可逆な酸化波が観測され(Ered1=-0.56V, Epa=+0.87Vvs Fc/Fc+)、C60の値(Ered1=-0.91V, Epa=+1.40V)に比べてLUMOの低下とHOMOの上昇が示された。一方、ZnCl2共存下のCV測定では、より低い還元電位が観測された(Epc=-0.48V)。これは、カルボニル基へのZn2+の配位による影響であるものと考えられる。
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