本課題では、生体を構成する最小単位である細胞の機能をin vitroで簡便に解析し、診断や薬剤などのスクリーニングのツールとして発展可能な技術をエレクトロニクスとの融合領域から研究開発する。平成20年度は、細胞をシャーレなどの培養皿に播種し、基材と接着していない細胞膜における電荷分布をイメージングする手法について検討した。その方法として、原子間力顕微鏡(Atomic Force Microscopy ; AFM)の動作原理を利用した。AFMで使用されるカンチレバーを準備し、そのレバー部の先端にnmサイズの微小な針を形成する。本年度は、針部に導電性の白金をゲート電極として作製することに成功した。針部以外の表面は絶縁膜としてSi_3N_4でコーティングすることにより、測定中の溶液との接触を針部の白金とのみ実現し細胞膜表面の電荷を高精度に計測可能になると考えられる。測定系にはExtended-gate型バイオトランジスタの原理を利用する。バイオトランジスタはシリコンデバイスに形成された薄いゲート絶縁膜上で起きる生体分子認識反応の電荷密度変化を検出するのに対し、Extended-gate型ではゲート部をトランジスタ本体から伸張しゲート表面での生体分子認識反応に基づく電位変化をトランジスタにより検出する構造をしている。そのため、ゲート部の材料を必要に応じて選択でき、センサーの繰返し使用を考えた場合、トランジスタは再利用しゲート部のみの交換となるためコストを低減することができる。特に本課題においては、センシング部となるカンチレバー(以後ゲートレバー)をトランジスタ本体から分離して作製できるため微小走査部の作製が容易となる。本年度は、以上の作製したゲートレバーを用いることにより細胞膜表面の負電荷を検出することに成功し、その動作原理を確認した。
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