平成21年度は、平成20年度に実施した非接着面における細胞膜の電荷分布に加え、基板に接着する細胞膜の電荷分布をイメージングするデバイス作製を実施した。一細胞のサイズが10μm程度の場合、基板上に1×1μm^2ゲートを縦横に10個ずつ合計100個アレイすることで、おおよそ一細胞がアレイ上に接着する。基板にはガラスを使用し、その表面にITO (Indium Tin Oxide)をリソグラフィー法およびスパッタリング法によりパターン化膜を作製した。ITOは透明で導電性があるため倒立顕微鏡でのその場細胞観察を行いながら電気測定を可能にする。さらに、Extended-gate型バイオトランジスタを使用する場合伸張されるゲートセンシング部には導電性の材料が必要となるためITOは有効であった。Insulated-gate型ではシリコンデバイスに形成された薄いゲート絶縁膜上で起きる生体分子認識反応の電荷密度変化を検出するのに対し、Extended-gate型ではゲート部をトランジスタ本体から伸張しゲート表面での生体分子認識反応に基づく電位変化をトランジスタにより検出する構造をしている。そのため、ゲート部の材料を必要に応じて選択でき、センサーの繰返し使用を考えた場合、トランジスタは再利用しゲート部のみの交換となるためコストを低減することができる。実際にITOをExtended-gate型で使用したところ、電位の安定性・応答性の評価が可能であった。その評価として、リン酸緩衝溶液(pH6.86)下にてドリフト(電位のばらつき)が数mV/hr以内の電位安定性が得られた。この結果は、細胞膜電荷分布のイメージングに使用する場合、数10mVの変化を計測するには充分であることがわかった。
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