20年度は、目視検査の実態調査に重点的を置き、研究を実施してきた。その結果、一般の組立作業などでは、作業の速さと正確性の間には、トレードオフの関係があると言われるが、目視検査においては、その様な傾向が見られないことが分かった。すなわち、熟練作業者は非熟練作業者と比ベて、「検査時間が短く」、かつ、「不良の検出率が高い」ことが実態調査より明らかになってきた。一方で、検査作業に携わる期間(検査歴)が長いだけ、つまり、単に作業経験を積むだけでは、熟練作業者のような検査方法を習得できないことも明らかになってきた。 この原因として、作業者の検査対象物の持ち方・動かし方について調査したところ、これらの動作は、非熟練作業者が模倣可能な動作であり、日常的な訓練を通して矯正されており、若干の個人差はあるものの熟練作業者との間に、明確な差は見られなかった。次に、熟練作業者と非熟練作業者の検査中の眼球運動を測定したところ、両者の間に相違が見られた。熟練作業者は主として衝撃性眼球運動を使用し、非熟練作業者は主として追従性眼球運動を使用することが分かった。しかし、なぜ、互いに面識のない熟練作業者が、同じような衝撃性眼球運動中心の検査方法を習得しているのか、また、どの様にして、そういった検査方法を習得したのかといったことは、20年度中には明らかにすることはできなかった。 21年度以降は、この点に着目し、実験室及び実際の工場において、これらの点について更なる検討を進める予定である。
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