本研究では、遺伝学的手法が導入された原始脊索動物カタユウレイボヤにおいて、トランスポゾンを用いた技術により突然変異体を単離する基盤を形成することを目的としている。本年度はエンハンサートラップと遺伝子ターゲッティングに着目して研究を進めているため、これら2つの項目に分けて報告する。 1. ホヤのエンハンサートラップについての基礎的情報を集める必要性から、トラップ系統から50種類のトランスポゾン挿入箇所を同定した。その結果、エンハンサートラップ系統の持つトランスポゾン挿入のおよそ半数が遺伝子のごく近傍、または遺伝子内に挿入を持つこと、約10%の挿入はエクソンに挿入されており遺伝子を破壊している可能性が非常に高いことが判明した。また決定された挿入箇所の中には、Hox1の上流およそ300bpの領域への挿入が含まれていたが、このようにプロモーター内部に挿入を持つ系統についても遺伝子を破壊する可能性が十分考えられた。実際にこの挿入を持つ系統はHox1のプロモーターを破壊した変異体であることを突き止めた。これらの一連の研究から、エンハンサートラップ系統を元にした突然変異体単離が十分機能することが判明した。 2. 遺伝子ターゲッティング法について、ターゲッティングに必要なI-SceI及びCre-loxPがホヤで機能することを突き止め、ターゲッティングベクターを持つ系統、Cre-loxP系統、I-SceI系統の作製を開始した。
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