本研究では、遺伝学的手法が導入された原始脊索動物カタユウレイボヤにおいて、トランスポゾンを用いた技術により突然変異体を単離する基盤を形成することを目的としている。カタユウレイボヤの卵でMinosトランスポゾンの転移酵素を発現させる系統を作製し、それを利用してゲノム中のMinos単一挿入を転移させる新たな系を構築した。それを利用してMinosがゲノム中をランダムに移動することが明らかとなった。このことからMinosが大規模挿入変異体作製に適していることを突き止めた。また本手法で作製される系統のおよそ15%がエクソンに挿入されており、それらの系統は変異体の有用なリソースになることを突き止めた。 前年度の本研究からHox1遺伝子の変異体が単離された。Hox遺伝子は発生や進化を研究する上で欠かせない重要な遺伝子であり、その機能を得られた変異体から明らかにすることを進めた。結果、Hox1遺伝子が表皮でレチノイン酸により誘導され、出水口原器の形成に働いていることを突き止めた。 逆遺伝学的手法として、遺伝子ターゲッティング法の導入を目指している。I-SceI系統、Cre-loxP系統、ターゲッティングベクター系統が作製されたため、現在これらの系統の掛け合わせを進めている。またカタユウレイボヤにおいて母性因子を介したGFP遺伝子のサイレンシングが生じることを明らかにしてきた。本年度はその現象を応用し、母性で発現する遺伝子を特異的にノックダウンする新技術を開発した。
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