研究概要 |
近年,シギ・チドリ類の飛来個体数の急激な減少が世界中で顕在化しており,餌場としての干潟・湿地生態系の保全や再生による飛来数の回復が喫緊の課題となっている.しかしながら,これまで鳥類の食性解析研究では,採餌物が全く確認できない事例が多数みられるなど,真相はいまだ謎に包まれている.したがって本研究では,干潟・湿地における鳥類の餌資源の解明を目的としている.特に,小型シギ類が堆積物表面に存在するバイオフィルムをどの程度利用しているのかについて焦点を当てている. 本年度実施した主要な研究内容は以下のとおりである.(1)国内8カ所国外1カ所の干潟・湿地において,望遠ビデオカメラを用いて採餌行動を撮影するとともに,鳥糞や餌生物を採取した.(2)撮影動画を用いて,採餌速度や採餌物サイズについて画像解析した.(3)鳥糞および餌生物中の炭素および窒素の安定同位体比を分析した(4)捕獲した鳥類の舌・階を撮影し,微細構造を観察した.(5)水中ドームカメラを用いて,干潟冠水時における採餌行動を撮影した.(6)鳥類の分布と餌資源量との関係を把握するために,リモートセンシングを用いた餌資源の空間分布に関する予備調査を実施した.(7)干潟・湿地環境の保全対策を請じた場合の飛来個体数変動を予測するための数値モデルの基本構造について検討した.(8)シギの採餌様式と環境条件との関係に関する論文を執筆・投稿し,受理された. 本年度実施した研究成果の社会への説明・発信は以下のとおりである.(1)研究内容を紹介するホームページを更新した.(2)国内2カ所においてアウトリーチ活動を実施した.
|