研究概要 |
近年,シギ・チドリ類の飛来個体数の急激な減少が世界中で顕在化しており,餌場としての干潟・湿地生態系の保全や再生による飛来数の回復が喫緊の課題となっている.しかしながら,これまで鳥類の食性解析研究では,採餌物が全く確認できない事例が多数みられるなど,真相はいまだ謎に包まれている.したがって本研究では,干潟・湿地における鳥類の餌資源の解明を目的としている.特に,小型シギ類が堆積物表面に存在するバイオフィルムをどの程度利用しているのかについて焦点を当てている. 本年度実施した主要な研究内容は以下のとおりである.(1)国内3カ所国外1カ所の干潟・湿地(コムケ湖・風蓮湖・盤洲干潟・米国サンフランシスコ湾干潟)において,採餌行動を撮影するとともに,鳥糞や餌生物を採取した.(2)撮影動画を用いて,採餌速度や採餌物サイズについて画像解析した.(3)鳥糞および餌生物中の炭素および窒素の安定同位体比を分析した.(4)鳥類の舌・嘴の形態を画像解析した.(5)鳥類の分布と餌資源量との関係を把握するために,リモートセンシング・レーダーを用いた餌資源ならびに鳥類の空間分布に関する予備調査を実施した.(6)米国地質調査所(USGS)からの招聘により,米国サンフランシスコ湾泥干潟におけるシギの食性研究に関して研究協力を実施した.(7)International Wader Study Group(国際シギ・チドリ学会)にて成果を発表した.(8)シギの採餌様式と環境条件との関係に関する論文を公表した.(9)3年間の研究成果をとりまとめ,小型シギ類が堆積物表面に存在するバイオフィルムをどの程度利用しているのかに関する論文の執筆を開始した. 本年度実施した研究成果の社会への説明・発信は以下のとおりである.(1)研究内容を紹介するホームページを更新した.(2)風連湖・米国サンフランシスコ湾において地元住民に対しアウトリーチ活動を実施した.
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