本研究では高齢化・少子化の進展によりケア従事者の不足が拡大していること、そのために人の国際移動が加速されていることが明らかになった。日本においては高齢化による進展とケアの需要増大が人の移動に直結しているとは捉えられていない。しかし、実際には定住者によりケアの国際化は進展している。また日本では経済連携協定による受け入れが開始されているが、他国では労働のみに着目した労働協約などにより受け入れが一般的である。 送り出し国においては外貨獲得源に占める労働者の送金の割合が増大しており、経済政策の中心をなす政策となりつつある。つまり、送出し政策は途上国において一般化しつつあり、先進諸国における高齢化もあって、ケアは途上国が期待する送り出し部門となっている。しかし、人口構成の変化はアジア諸国において他の世界の諸地域よりも急速であり、途上国の送り出し政策は、長期的には見直しを迫られる可能性がある。とはいえ、経済格差や先進国におけるケアの需要増大を考えると、人の移動の加速を止めることは困難であり、多国間の協調体制の構築が必要となる。そのさい、移民政策だけではなく、送り出し国における教育や医療、地域開発の視点における協働が必要であろう。 また、結婚移民が日本、韓国、台湾で増加、あるいはすでにピークを越え一定の数に上っているが、結婚移民は当初農村部における老親ケアに従事していることも多く、高齢者や障害者ケアに従事している者も多い。また、台湾や日本においては施設介護が社会統合政策の対象になっていることもある。したがって、ケアが人の国際移動に大きな影響を及ぼし、人の国際移動がケアに統合されるといった側面がみられる。
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