本年度は、随心院聖教調査(2回)と早稲田大学図書館所蔵寺社縁起関係資料調査(3回)を、原本調査の柱として遂行した。前者では、昨年度に撮影を完了した密教図像資料『別尊雑記』の書誌記録を取り終え、また、翻刻刊行予定のある「三部抄」注釈書(『玄秘鈔口伝』『妙鈔口伝』『金宝紗口伝』『玄秘抄聞書』『金宝集聞書』『諸尊要抄聞書』)の関係資料、および蔵書の変遷を辿るための一視角として古目録類の調査・分析を進めることができた。後者は、早大図書館所蔵の古典籍類の中から寺社緑起関係資料(縁起のほか霊験記・僧伝・霊場記・名所記・境内図等も対象とする)の調査に着手し、南都関係の資料を中心に詳細な書誌記録を取った。なお、これらの調査以外にも、文庫・図書館等での小規模な調査や、国文学研究資料館のマイクロ資料による関係資料調査もおこなった。 本年度の主夏テーマとして掲げていた如意宝珠をめぐる信仰や、御流神道・三輪流神道の問題については、上記調査や、公刊されている資料類の検討を基礎作業として分析を進めた。一方で、学会における南都・密教・中世神道関係の研究報告の聴講や、研究会における議論等によっても、当該テーマに関する情報を得、知見を深めることができた。その成果は、既発表論文を著書に再録する際に、また、編著書に書きおろす論文として反映させる予定である。なお、本来は来年度に予定していた蔵書目録の検討を、やや予定を早めて今年度より着手した。来年度の作業遂行にあたり、ある程度の見通しを得ることができた。
|