本研究では、18〜19年度科学研究費補助金若手研究(B)で第二言語習得と心理言語学を融合させた視点から示した「第二言語及びバイリンガル話者における言語と認知プロセス(cognitive processes)の関連性」の研究を更に発展させることを目的とし、新たな実験方法として眼球運動測定をバイリンガルの読みの研究に導入、バインリンガル・プロセスモデル構築を試みる。 今年度は上記の先行研究で使用した視覚単語認知実験を眼球運動測定器上で実施するために、眼球運動を使った言語実験の先行研究の研究、アイトラッカーTobii T60の購入およびパイロット使用を行った。イギリス・エセックス大学で眼球運動を実施している心理言語学の研究者から実際に機器、実験について話を聞き、機器の選定および実験デザインの開発を行った。また、これまでの5言語グループ(英語、日本語、イタリア語、中国語、フランス語)の英単語認知実験結果をまとめ、国際学会(米ジョージタウン大学)で発表、意見交換を行った。第一言語と第二言語の表記法の関係性(文字が音や意味を表す単位の違い、等)を考慮した刺激条件によって反応時間および正答率に言語グループ間の差が出ることから、第一言語の表記法が第二言語の読みに影響し、各グループの読みのプロセスに違いがあることが示唆された。今年度購入したTobiiのベーシック版のソフトウェアでは開発したオンライン・リーディングスパン・テストを行うことは可能だが、スクリーン上の単語を選ぶ反応時間を測定する単語認知実験を導入することは困難が生じた。今までのデータとの比較を行うためにもソフトウェアのアップグレードを行い、実験デザインの改良と十分なパイロット実験をもとに本格的なデータ収集に進む予定である.
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