第二言語の言語知識や使用経験が増えるにつれどのように認知プロセス(特に読みのプロセス)が変わっていくかについて新たな実験調査方法も取り入れてデータの多様化を目指し、多言語的・発達的に見たバイリンガルプロセスモデルの構築を進めた。初年度に購入したアイトラッカー(眼球運動計測機)を使い、文章レベルの読みの実験の実施および改良を継続した。英語を母語とする子どもの読み書き能力の研究、および日英バイリンガル環境での読み書き能力についてイギリスで文献収集を行うとともに、実際イギリスに住む日英バイリンガル児がどのように第一・第二言語表記法を学ぶのか調査した。さらに、日本語を第二言語とするバイリンガルがどのように日本語の読むのかという観点から手話話者および韓国人を対象に読みの実験も行い、学会で発表した。6月に来日した第二言語の表記法およびマルチコンピタンス研究で著名な英国ニューカッスル大学のVivian Cook教授をお招きし、学生および研究者向けの講演会・ワークショップを企画・実施した。英国エセックス大学の共同研究者とともに絵と日本語の文字(漢字・かな)の認知プロセスの違いを調査する実験を日英バイリンガルを対象に進行中である。日英バイリンガルの色の認知が日本語・英語の使用状況によって変化することを示した共著論文が、国際論文雑誌に掲載された。以上、さまざまな進行中の実験研究の結果から、読みの認知を含むバイリンガルの認知は二つの言語に影響されながら確立され、言語の使用状況によって柔軟に変化することがわかってきた。
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