本研究は、製品構想(コンセプト)と技術開発の関係性に着目して、効果的な製品開発のプロセスや組織を解明することが目的である。特に、技術的な進歩が直接的に製品価値を生み出さないようなケースを想定し、そうした場合の価値をどのように定義し、製品コンセプトをどのように開発するのかを探求することが中心的なテーマである。これらの研究は我が国製造業が直面するコモデティ化による収益性の低下の克服と密接にかかわるものである。昨年度は、技術がもたらす価値とその限界についての議論を整理した後に、技術を価値創造の重要な要素としながらも、素朴に技術開発をして機能・性能のみを製品の価値とするのではなく、技術を直接的、間接的に利用して、より情緒的で定性的な価値創造を行うことの重要性を示した。本年度はさらに開発組織が価値をどのようにマネージすればよいのかについて更なる考察を加えると同時に、これまでの研究成果を書籍としてまとめる作業を中心に研究活動を行った。新たな研究への取り組みとしては、機能性飲料の効果感の測定、法的規制がイノベーション・製品コンセプト開発に与える影響、デジタル技術を応用したアフターサービス事業、デジタル技術を応用した文化財保存などの研究や調査を開始した。これらは継続して来年度も研究を進め早期に学会報告、論文等の形で公開する予定である。また、現在行っている書籍の執筆・編集作業は来年度も継続して行い、来年度中の刊行を予定している。
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