研究課題
若手研究(A)
本研究では、先行開発の活動の中からニーズを規定していくことの可能性を検討している。技術サイドからニーズを規定する概念としては、古くから技術プッシュの考え方がある。技術プッシュの考え方では、技術開発時に市場や顧客のニーズを構想するというものではなく、開発された技術が結果としてニーズを生み出しているというものである。本研究のアプローチは、将来の市場のニーズを予測しながら技術開発の構想を作り上げる先行開発のプロセスであり、それは技術プッシュとは異なる。また、将来の市場予測に高い不確実性が伴う場合、不確実性低減のためのマネジメントが必要であり、研究代表者のこれまでの研究では、多様な事業構想を同時並行的に持ち続けることによって、リアル・オプション的な不確実性の低減の可能性を指摘している。この研究では、先行開発の多様性を認めることによってR&D投資の増大を招く恐れがあるという問題点が指摘されており、本研究においては、多様な事業構想による不確実性の低減と、R&D投資の増大をバランスさせる(あるいはR&D投資の増大を伴わない)マネジメントを明らかにすることが第1の課題である。本研究のもうひとつの課題は、多様な事業構想には非技術的な要素も多く含まれるのではないかという命題を明らかにすることである(例えば、工業デザインや操作性など)。この課題を検討するためには、分析の対象は先行技術開発だけではなく、製品開発に先行する工業デザインや商品企画などの活動も含める必要があると考えられる。これらの2つの課題を明らかにすることが本研究計画の主要な目的である。
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