今年度は、秋田県旧鷹巣町(現・北秋田市)の対照地域として、北海道伊達市を選定し、「市民福祉意識調査」を実施した。両自治体のまちづくりのキーワードとして、前者は高齢者福祉を取り上げていたのに対し、伊達市では障がい者福祉を取り上げ、今日にいたる。 調査票は、市民が次の各点についてどう捉えているのかを明らかにするために設計したものである。(1)福祉意識、(2)「福祉でまちおこし」、(3)地域福祉の推進方法、(4)従来のまちづくりのキーワード、(5)この10年間にみる家計の変化、(6)家計の将来の見通し、(7)今後、市の活性化を握るキーワード。 調査対象は、市役所の協力による無作為抽出で選定された3500名の20代から70代までの市民であった。回収率は50%(回収部数1750部)であった。主な調査結果は、日常生活上の心配事として、(1)「健康」、(2)「経済」、(3)「介護」をキーワードに盛り込まれた選択肢が上位に選ばれた。経済基盤関連の2設問の回答結果として、「この10年間の家計」、「家計の将来の見通し」について、いずれも「悪化」と回答した割合が最も多く、ともに6割を超えた。これらの回答結果-市民のなかの「経済不安」-を反映したかのように、今後、市の活性化を握る鍵として、回答数の多い順で、(1)「経済対策」、(2)「高齢者の生活や介護への支援」、(3)「商店街の活性化」となった。この回答結果から、市政の優先順位として、経済対策の重要性が認められたと同時に、高齢者福祉分野の充実を求める市民の意識が把握できた。また、福祉意識の回答結果として、「福祉サービスの充実により、新たな雇用創出につながる」について、肯定的な回答が6割を超えたものの、福祉のイメージについて「産業」という選択肢を選んだ割合は1%未満と低かった。これらの回答結果から、福祉サービスの充実は地域経済の活性化をもたらすと期待する市民が多かったものの、「福祉産業」という概念は市民にとって馴染みが薄いこと、ひいては、福祉を産業に結びつけることに負のイメージを持った市民の存在が推察できる。 次年度は、他の調査項目と突き合わせながら、福祉意識が福祉産業という概念にどのような影響を与え得るのか、その原因の究明を研究内容に加え、引き続き考察を深め、研究成果を挙げたい。
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