研究概要 |
申請者の理論研究(杉山,2006)を質的に検討するための、20年度に引き続いて質的な資料収集を行った。資料収集の方法は、4名の臨床家への半構造化面接およびPAC分析で行った。被験者となる臨床家の選択基準は、1)臨床歴10年以上、2)臨床心理士または医師、3)臨床心理士向けの指導的な役割を務めている(自費出版でない専門的な著作がある、臨床心理士資格更新のポイントの対象となる研修の講師を務める、など)、以上3点である。インタビューの内容は、臨床的オリエンテーションについて、治療関係とは何か、治療関係の危険性、などの項目を刺激として用いた自由連想と「適切に展開した手応えのある心理療法と手応えのない心理療法」を刺激文として用いたPAC分析から構成された。20年度に同じ方法で収集した6名を加えた都合10名のインタビューの結果を基に、適切に展開する心理療法において臨床心理士が配慮している、注目していることがらを抽出し、リスト化するなどの方法で公表の準備を行っている。次に統合的な心理療法として来談者中心的認知行動療法を確立するために、基礎的な心理学と心理療法の統合を目指して、認知心理学、神経-生理心理学、発達心理学、社会心理学、行動分析学の各領域の代表的な研究者にインタビューを行い、各領域の心理療法における機能についての試論を公表した。また、中学生を対象に行った抑うつの要因である被受容感の低さを軽減するプログラムの効果検討を行い公表した。
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