研究概要 |
フリップの終止予想の還元先の一つである,極小対数的食違い係数の昇鎖律について考えた.対応する対数的標準閾の昇鎖律へのKollar及びde Fernex, Ein, Mustataのアプローチに従って,多様体(と境界の組)の列の極限,いわゆるgeneric limitを構成し,その極限の極小対数的食違い係数と元々の係数の成す列の関係を調べた.昨年度のイデアル進半連続性の研究から引き続き,真に対数的標準特異点を持ちながら正の極小対数的食違い係数を持つ場合の扱いが課題となるが,これは,閉点を台に持つ閉部分スキームの列の極限が,正次元の閉部分スキームになりうるためである.その場合にも対数的標準閾についての諸結果への帰着ができないかを試行錯誤し,部分的な結果は得られた.しかし一般にはむしろ,精密逆同伴予想のように,次元による帰納法を幾何的視点から定式化させるべきことが分かった. 一方で,終止予想の還元先の昇鎖律及び下半連続性のいずれの系でもある,極小対数的食違い係数の上からの有界性を,局所完全交叉でないGorenstein特異点が初めて現れる余次元3の場合について考えた.モチーフ積分による係数の公式に現れる,局所完全交差欠陥イデアルの評価である.実際は余次元3への限定は埋込次元を限定するので,係数の有界性を既に私は得ている.従ってさらに係数を次元で抑えるべく,余次元3のGorenstein環が持つPfaffianによる明示的表現によって,幾らかの具体的設定のもとで欠陥イデアルの評価を行った.
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