本研究は、日本の科学衛星「ひので」により見出された、太陽表面上のいたる箇所に存在する、水平方向を向き、磁場強度10ガウス程度の「弱い磁束管」の起源をさぐることを目的とする。これらは太陽黒点の残骸磁束管ではなく、これまで知られていなかった表面乱流のダイナモに起因すると考えられつつある。この微弱磁場の発見は、太陽表面下のプラズマ乱流や対流層構造の全体像を一新する可能性を秘めている。本研究では、京都大学飛騨天文台の太陽磁場活動望遠鏡(Solar Magnedc Activity Research Telescope : SMART)の偏光計測装置の高精度化をはかり、この「弱い磁束管」のhour〜yearにわたるさまざまな時間スケールのデータ解析からその起源および、太陽表面乱流での磁場生成過程を探るものである。SMART望遠鏡の偏光観測モジュールである第4鏡筒(T4)に設置されている偏光データ取得システムは、偏光モジュレーションを与えるための回転波長板、Fe I 6302吸収線観測用ファブリペロー式狭帯域フィルター、偏光ビームスプリッタと2台の大フォーマットCCDカメラから成る。昨20年度は、2台のカメラを高速読み出し可能なものに交換し、従来の適宜での画像読み出し速度(5s)を、毎秒30フレーム読み出し可能なシステムに更新を実施した。さらにファブリペローフィルターおよび、回転波長板の制御装置ソフトウエアの開発を行った。これにより、数秒の観測時間で、シーイング誤差を抑えつつ高精度偏光計測を実施するシステムの大枠が構築された。観測時間は従来の10倍以上短縮できる見込みであり、大幅なデータ品質の向上が期待できる。
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