研究概要 |
本研究では非従来型超伝導体における超伝導対称性および常伝導状態で見られる異常な量子状態の統一的な理解を目的とし,これら超伝導対称性と異常な量子状態を多重極限下で調べた.まず,高圧下比熱測定によりβ型パイロクロア超伝導体RbOs_2O_6およびCsOs_2O_における精密な温度-磁場-圧力相図を作成した.その結果,3つあるパイロクロア超伝導体のいずれもほぼ同じ格子体積で転移温度の1次転移的な消失があり,さらにその高圧側で別の超伝導が現れることを明らかにした.さらに圧力下での比熱のとびを評価しその結果から圧力により電子格子結合がどのように変化し,それが超伝導転移温度にどのように関係しているかを明らかにした.一方,量子臨界点近傍にある強相関電子系YbAlB_4およびYbRh_2Si_2の熱伝導率,ゼーベック係数およびネルンスト係数を極低温・磁場中で測定し,これらの物理量の振る舞いがYbAlB_4とYbRh_2Si_2では大きく違うことを見いだした.そしてこれらの物理量と比熱などの他の物理量を組み合わせることにより量子臨界性の違いを定性的に区別出来る可能性があることを示し,YbAlB_4とYbRh_2Si_2でみられる輸送係数の違いがそれぞれの量子臨界性の違いによるものであることを指摘した.さらにその結果からYbRh_2Si_2における量子臨界性がそれまで議論されていたものとは異なる可能性があることを指摘した.
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