研究概要 |
長期間安定的に細胞を培養するためには、細胞培養液中に酸素、二酸化炭素、栄養分が十分に供給され、かつ、排泄物がバルクの培養液中に拡散希釈される必要がある。また、試料チャンバーの体積に対して表面積が増大すると、バクテリア、マイコプラズマ等により汚染される可能性が増える。従来のマイクロレオロジー計測システムでは、高いNAを持つ(従って)短作動距離の油浸コンデンサーレンズを使用して、試料を通過したトラップレーザーを集光していたため、サンプルを狭いセル中に封入する必要があった。そのため、簡便に計測試料を作製することと、長期にわたり細胞の健全性を保つことが困難であった。 そこで本研究では、細胞培養可能な広帯域マイクロレオロジー計測システムを構築した。マイクロレオロジー計測では、水による吸収の少ない近赤外レーザー(1064nm, 830nm)を、高いNAを持つ対物レンズで試料中に集光し、コロイド粒子を光トラップする。トラップ後のレーザー光の回折を4分割光ダイオードで検出し、コロイド粒子位置を精密検出する。今回作製する計測システムでは、油浸コンデンサーレンズのかわりに水浸対物レンズで透過光を集光した。水浸対物レンズは培養液に直接浸すことができるため、これにより計測試料を狭い空間に封入する必要がなくなった。さらに試料台上方にピエゾ駆動のシアーセルが設置できるように工夫し、細胞に外部から応力を与え、細胞内部の粘弾性が申請者らの発表した理論通りに制御されるか確認できるようにした。
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