研究課題
当初の予定通り、数値モデルとして、複雑な粒子形状を取り扱うことのできるセルラーオートマトン法を用いた岩屑流動の数値コードを開発した。このモデルを用いて大規模な数値計算を行うために、並列化計算機を導入し、現在までにおいてもある程度の高速化に成功した。本研究におけるモデル計算を、直接対比できるほどの高解像度の画像が取得されている小惑星は、イトカワとエロスが挙げられる。そこでこうした天体における岩屑の分布を、探査機によって取得された全ての画像を丁寧に検討することで調べた。その結果、合計2万個以上の岩塊の輪郭を抽出すると共に、その分布特性に対して次のような新たな知見を得た。(1) 岩塊の表面に見られる形態的な特徴とその統計的分布から、岩塊の集合体の年代を推定できることを示した。(2) 画像解像度による影響が少ない相対サイズ頻度分布を詳しく調べると、小惑星表層において岩塊の分布にある程度の地域性が見られることがわかった。(3) 岩塊の分布は完全にフラクタル性を持つのではなく、ある程度の大きさより小さな岩塊の分布は、全体の傾向とずれていることが見いだされた。こうした特徴は、小惑星におけるクレーターの形成に伴ってレゴリスが作られるという従来の考え方では説明が難しく、現段階では岩塊の物質強度が大きく影響しているのではないかと考えられるため、数値モデルにこの効果を入れた検討を行うことを予定している。
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