イトカワのような低重力下において、振動によって流動した微小粒子が、電気的な浮遊によって受ける影響が重要となることを明らかにした。この効果が最も強く表れる場所として、衛星アトラスをはじめとした土星系の小さな衛星が挙げられる。理論的な検討から、これらの衛星において、粒子の電気的な浮遊・移動の効果が表層のリサーフェシングプロセスとして支配的であることを明らかにした(現在国際誌に投稿中)。これはイトカワで提唱した粒子対流よりも現象としてははるかに大規模であり、微小重力下における粒子の挙動という意味で革新的な発見であった。そのため本研究が最大の目的として掲げていた、微小重力下における地質現象という新しい分野の開拓という意味において、重要な貢献を行うことができたと考えている。こうした新しい現象が見つかったため、将来的には次期小惑星探査計画などを通じて実地検証を行う必要がある。そこで電磁波を用いた地下構造探査の手法を検討した。特に実験室において基礎実験を行い、適切な周波数帯を選択することができたことが重要な成果であった。また、粒子流動の研究を発展させることで、火星における砂の流動に関する新しいモデルを提唱し、国際誌に掲載された。
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