インドネシア・スマトラ島コトタバンの京都大学赤道大気レーダー(EAR)サイトにおいて、送信周波数30.8MHzのVHFレーダーを用いたE領域及びF領域沿磁力線不規則構造(FAI)の連続観測を継続して行うとともに、2009年に設置した5チャンネル受信専用装置を用いてFAIのレーダー・イメージング観測を行い、FAIの微細構造を明らかにした。得られた研究成果は、以下の通りである。 1.F領域FAIの連続観測から、従来から知られているFAIとは異なり、5-8月の真夜中過ぎにFAIの発生頻度が高いことを明らかにし、このFAIの多くが西向きに伝搬することを統計的に明らかにした。また。この真夜中過ぎFAIの発生頻度は、太陽活動度に対して顕著な逆相関を示すことを明らかにした。さらに、情報通信研究機構のイオゾンデ観測データを統計解析し、5-8月の真夜中にF層高度の一時的な上昇があることを明らかにした。これらの観測結果をもとに、モデル計算を行い、F層が上昇するにともなってRayleigh-Taylor不安定の成長率が大きくなりプラズマバブルが発生したことが真夜中過ぎFAIの生成原因であると考えられることを示した。 2.VHFレーダーによって観測されたE領域FAIの発生頻度及びドップラー速度の統計解析を行った。その結果、E領域FAIの発生頻度は、顕著な半日周期変動を示すことが明らかになった。この結果より、半日周期の大気潮汐波がスポラディックE層の生成に強く関与しており、E領域FAIはスポラディックE層に伴って発生していると考えられる。また、FAIエコーのドップラー速度は、高度約94km以上電離圏電場によるExBドリフトの方向に一致するが、約94km以下では中性大気風速の影響を強く受けていることが明らかになった。
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