本研究では、カナダ上部白亜系の未記載標本ROM 29010(カナダ国・ロイヤルオンタリオ州博物館所蔵)を用いた脳函の比較解剖学による首長竜(双弓類、鰭竜類)の系統仮説の検証、野外調査、及び博物館所蔵標本の記載的研究による化石産出地域(カナダ中西部のマニトバ・エスカープメント)の学術的将来性の評価を目指している。平成20年度は3年計画の1年目であり、カナダ出張(オンタリオ州オタワ、アルバータ州、サスカチュワン州、マニトバ州)及び中華民国(台湾)と中華人民共和国の研究者との情報交換を含む以下の研究活動を行った 1. Canadian Museum of Nature(カナダ・オタワ市)にて借用しているROM 29010を詳細に観察し、論文に使用するscientific illustration作成の際に必要な骨学的な形質の同定や下絵作りなどを行った。 2. 系統解析における形質の極性評価のため、原始的な鰭竜類や鰭竜類に近縁な可能性のある三畳紀の双弓類との比較解剖学的研究を、国立自然科学博物館(中華民国・台中市)、中華人民共和国浙江省自然史博物館、及びロイヤルティレル古生物学博物館(カナダ・アルバータ州ドラムヘラー市)が所蔵している標本を中心に行った。 3. 平成21年度夏に予定しているカナダでの野外調査に備え、調査地域(マニトバ・エスカープメント)及び関連する地域の地質情報の文献調査を行った。 4. ROM 29010標本の産出地域(マニトバ州南部Thornhill-Morden area)を含む、調査地域の下見を行った。併せて、マニトバ州にて行われた古生物学会に参加し、マニトバ州とサスカチュワン州の博物館・関係者を訪問するなどして、新しい標本や露頭に関する情報の収集、及び平成21年度の野外調査における協力予定者との打ち合わせを行った。
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