20年度において、粒界拡散実験・粒成長実験・粒界拡散クリープ実験に用いられる、極細粒・高緻密鉱物多結晶体の合成法開発を行った。出発物質としてナノサイズの微粒粉を用い、異なる微粒粉の十分な撹拌、酸素雰囲気下での1000度での仮焼、ダイスを用いた成形、真空下1300度程度での本焼結を経て、空隙率0.1%を切る焼結体を得ることに成功した。それらは、フォルステライト単相および二相系であるフォルステライト+エンスタタイト、フォルステライト+ペリクレース系である。3つ目の試料は、粒径200nm程度と、極めて微粒な粒子からなる試料を得られた。他の試料でも、粒径1ミクロンを切るような試料を得ることにも成功した。また、成形型を加工することで、様々な形を持つ試料が得られることも判明した。合成試料は、すべてX線回折法による相同定、走査型電子顕微鏡法による空隙の有無や分布、また相の分布も、エネルギー分散型マッピング法により調べられた。また、透光率も調べられ、空隙率の低さが、透光性を高める要因であることも確かめられた。これらの評価を通して、本試料は、次の研究段階である粒界拡散実験・粒成長実験・粒界拡散クリープ実験に適したものであることを示せた。次年度においては、本年度合成できなかった、他のマントル主要鉱物ダイオプサイト、鉄入りオリビンの試料合成法開発を急ぐ必要がある。これらは、組成的にも異なることから、新たな元素ドープ法の探索、また、酸素雰囲気制御を行う必要もあり、それらにむけた準備作業も行った。
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