研究概要 |
地球型惑星のコア・マントルのサイズ, 化学組成, 酸化還元度は多様である. これは鉄の存在度や存在状態(珪酸塩・金属・硫化物)の違いとして捉えることができる. 惑星内部の鉄の存在状態の違いは物質循環や固有磁場の発生を通じて表層や生命圏にも影響を与え, 惑星の起源や内部進化のみならず表層システムの進化や安定性にも重要な要素と言える. 惑星間の鉄の存在度や存在状態の多様性を理解するための第一歩として, 原始惑星系円盤での惑星材料物質において鉄の総量がどの程度であったか, 存在状態の異なる鉄が惑星形成直前にどのように分布していたかの理解が重要である. 本研究では, 原始惑星系円盤内で鉄の存在状態を変える主要化学反応である珪酸塩-金属間の鉄の分配(酸化・還元)や金属鉄の硫化反応の速度やメカニズムを室内実験で解明する. また, それらの反応が原始惑星系円盤内で充分に進行しえたかを検討し, 微惑星形成直前の原始惑星系円盤内での鉄の存在度・存在状態の空間分布を描き, 惑星形成の化学的初期条件の決定をおこなう. 現有の赤外線真空炉を用いた予察的実験により, 現有装置の改造をおこない実験を進める方が効率的であることが判明した. そのため, 現有装置に, 流量制御機能を備えた硫化水素ガス導入機構および排気ガス中の硫化水素除去のための活性炭フィルターを作成に関する検討をおこなった. また, 試料の重量変化を高精度で測定するために, 0.01μgで測定可能な電子天秤を購入した. 第一原理電子状態計算を用いて, 珪酸塩中の元素拡散の活性化エネルギー予測, 金属鉄の表面エネルギーの不純物依存性を求めるための基礎研究を開始した. 装置開発状況や実験結果の一部は2008年7月に松江市でおこなわれたMeteoritical Society Meetingや2009年3月にヒューストンでおこなわれたLunar and Planetary Science Conferenceなどで発表した.
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