低温プラズマと液体を接触させて行う液中プラズマプロセスにおいて、気相中のプラズマによって生成される液中フリーラジカルを電子スピン共鳴(ESR : Electron Spin Resonance)法を用いた測定手法を確立することにより、その反応機構を解明することを進めた。ヒドロキシルラジカルに代表される短寿命ラジカルは気液界面近傍にしか存在し得ないが、スーパーオキシドなどの数秒〜数十秒程度の寿命を持つラジカルは液中を拡散することが期待され、この計測を試みた。通常のESR法では測定に数分程度の時間がかかるためにラジカルが消滅してしまう事が考えれるために、プラズマを照射する液体にラジカルトラップ剤を混入させてラジカルをスピンアダクトとして長寿命化させることで計測を行った。 プラズマ源にはLF(Low Frequency)プラズマジェットと呼ばれる、ヘリウムガスで生成した大気圧低温プラズマを用いた。このプラズマが周囲のガスを励起して、液中にラジカルを生成することが考えられるために、雰囲気ガスを制御可能な気密式の液体へのプラズマ照射装置を開発した。それを用いて実験を行ったところ、雰囲気ガスに酸素が含まれる場合のみに、液中に大量の酸素ラジカルが生成されることが確認された。これは、雰囲気ガス中の酸素分子から、液中にスーパーオキシドなどの酸素ラジカルが形成されることを意味している。トラップ剤を使った実験では、空間分解能も無く、また、ラジカル生成に関する時間情報も得られないために、ESR装置にその場観測を可能とする機器を組み込み、さらに時間分解ESR法を用いて液中ラジカルの生成過程のダイナミクスに関する研究を行えるようにESR装置の改造を行い、来年度への実験準備を進めた。
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